2024年「住宅ローン」固定? 変動?「長期金利上昇」でどう変わる?

住宅ローンは返済期間が35年などと長いので、金利の違いで返済額が数百万と大きく変わってきます。

日本銀行は超低金利政策を続けてきましたが、今年秋に1%超を容認する姿勢に転じたのは皆さんもご存じのことと思います。

日銀の方針見直しを受け、さっそく3メガバンクは、11月適用の住宅ローンの固定金利の「基準金利」を引き上げました。

住宅ローンの金利タイプは固定型と変動型、さらには一定期間の金利を固定した「固定期間選択型」の3種類がありますが、どのタイプにすればいいのかは、人によってメリット、デメリットが違ってきます。

今後、金利上昇の局面でどう行動すればいいのか、10年、20年先の経済や金利水準、収入や家族の状況など、事前にシミュレーションしておくことが大切になりそうですね。

そこで、今回は今後の住宅ローンについて考えてみました。

 

今までは、圧倒的に「変動金利」がお得だったけど…

住宅金融支援機構の2023年4月の調査によると、住宅ローン利用者の72.3%が変動金利を選び、固定期間選択型は18.3%、固定型が9.3%となっています。

変動金利の住宅ローンは、長期債務なのにキャッシュフロー(お金の流れ)が固まっていません。

経済や金利動向をみている専門家からも「変動金利の住宅ローンでは、この先、利払いが増えていく可能性があり、その備えをいまのうちから考えておかないといけません」と警告しています。

当面は、金利が急騰する可能性は小さいかもしれませんが、5年、10年と先を見通すと、物価や賃金の上昇により、日銀が金利を低水準に抑え込んでいる金融政策が正常化していくとみられています。

そのときは、経済活動の状況次第で、金利がもっと上がり、海外のように日本も数%程度になっていても不思議ではありません。

 

たとえば4000万円を借りて30年間で返済するケースでみてみましょう。

全期間を固定金利にすると、諸費用を除く表面金利が1.6%という商品だとすると、単純な試算で総返済額が約4963万円、月額返済額は約16.4万円となります。

一方、現在は低金利が魅力の変動金利で1%切る商品がほとんどですが、今後金利が上昇していき、全期間の平均金利を3.0%にすると、総返済額約5805万円、月額返済額の平均が約21.1万円にもなるということです。

変動金利を利用している人で、金利が上がってきたら固定金利に切り替えればいいと思っている人も少なくないと思います。しかし、一般的に固定金利が上昇したあとに変動金利が上がるので、先行して上昇した固定金利への切り替えは現実的ではないでしょう。

ただし、返済額が上がっても、金利の動向を気にしなくていい安心感を得たい人は、他行の固定金利へ借り換える選択肢はいいと思います。

ネットの変動金利の場合は、金利が上がる前に手を打つのがポイントになってきます。

それには『繰り上げ返済』が有効です。ネット契約では手数料が取られないことが多いので少額ずつでも繰り上げ返済していくことが大事といえます。とはいえ教育資金や老後資金に手をつけるのはNGです。預貯金がない場合は早急に家計見直しのうえ、繰り上げ返済用の資産を作った方がよさそうです。

金利が上昇していくときに、繰り上げ返済が難しい余裕のない家計は破綻してしまうことがあるので注意しましょう。

変動金利が上がるとしても見直す時間はあります。見直しの目安は「ローン残高1千万円以上、返済期間10年以上、金利差1%」と言われます。これに該当する人は、わが家の住宅ローンの今後について、考えるチャンスです。

 

■「変動」でも5年は返済額が変わらない「固定金利選択型」

「変動金利が急上昇しても返済額が大きく増えないように、5年間は返済額が変わらず、5年後も返済額は1.25倍までしか上がらない『5年ルール』が原則あります。

「固定金利選択型」は「全期間固定型」に比べると金利が低くお得感はありますが、固定期間終了後に金利が上昇していると返済額が増えてしまう場合があります。金利が上がると毎月の返済から利息にあてられる額が増え、元本が減るスピードが鈍ります。

「全期間固定型」のように借り入れを始めた時点で総返済額を知ることはできないため、長期に渡るマネープランが立てられません。

金利変動幅や返済額について上限などは設定されていないため、大幅に金利が上昇すれば、当初の返済期間では残高がゼロにならず、老後資金や退職金などが消えてしまう懸念があるので注意が必要です。

特約期間終了時点で、再び固定金利にするか変動金利にするかを選択することができますので、前もって予測を立ててシミュレーションしておくのがいいと思います。

 

◆固定金利の住宅ローン「フラット35」子どもの人数に応じ金利引き下げへ!?

住宅金融支援機構は子育て世帯の住宅購入を支援するため、長期固定型の住宅ローン「フラット35」の金利を子どもの人数に応じて引き下げる優遇措置を始めることにしています。

優遇措置の主な対象は申し込みの時点で18歳未満の子どもがいる世帯で、ローンの返済開始から5年間、子ども1人を1ポイントとして、年間の金利を0.25%引き下げます。

例えば、子ども1人の世帯が35年ローンで3000万円を借り入れして住宅を購入した場合、現在の金利で換算すると優遇措置によって月の返済額は9万9000円から4000円引き下げられます。

このほか、子ども2人の世帯は0.5%、子ども3人の世帯は0.75%引き下げられ、引き下げは最大1%となっています。

さらに、「フラット35」では省エネ性能の高い住宅を購入したり、地方に移住したりする場合にもポイントが加算され、金利を引き下げる措置が設けられています。

5ポイント以上の場合には次の5年間に繰り越すことができ、ポイントに応じて年間の金利が引き下げられます。

来年2月をめどに優遇措置を始める計画です。

 

◆上級者向け 固定金利+変動金利の「ミックスローン」で、「変動」部分を繰り上げ返済?

共働き夫婦が多いなか、それぞれが借り入れる「ペアローン」という方法もあります。

たとえば、夫婦の一方が固定金利、もう一方は変動金利で借りるとか、総借入額を夫婦で分散して負担するとか。借り入れるのが1人でも「ミックスローン」を選択して、固定金利と変動金利の部分に分けておき、金利が上昇してきたときに、変動金利の部分を先に繰り上げて返済できるのがいいですね。

そのときに、繰り上げ返済する部分を、自分に合った条件のローンに借り換えるのも選択肢となります。

夫婦でペアローンを組む場合に、たとえばフルタイムで働いていた妻が出産の産休や子育ての時短勤務、さらには正規職員からパートになることで収入がどうなるのか。勤め先の制度や対応でも違ってくるので、妻の収入がどうなるのか、事前によく調べて、考えておくことが大切といえます。

 

まとめ

新総裁によって異次元の金融緩和政策から正常化へ向かうとすれば、銀行が変動金利を上げる後押しとなるでしょう。一気に上がらないとしてもじわじわと上がっていくだろうと言われており、変動金利を選んだ人は今後の状況を注視しておく必要がありそうです。

また2024年以降は、基本的に省エネ基準を満たす住宅のみが制度の対象となり、借入限度額の引き下げなどが実施されます。そのため、住宅の新築・購入時期は、制度の改正内容をふまえて検討するのがおすすめです。