今後、ロシアのウクライナ侵攻が木材価格に影響を与える恐れが濃厚になってきました。
世界の約2割の森林を有する森林大国ロシア。同国のウクライナ侵攻を受け、木材の供給減少が日本国内における木材需給バランスに影響を与えかねない、との危惧が木材関係者の間で広がってきました。
今回は終わらないウッドショックの理由について調べてみました。
理由①ロシア産は全て「紛争木材」に!
PEFCによる「紛争木材」の定義は以下の通りです。
「武装集団、あるいは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目的が紛争の永続化または個人的な利益のために紛争状態を利用することにある場合」。紛争木材は森林認証されず、PEFC認証を受けた製品全てに使用できないことになる。
日本でも大手企業を中心に木材供給網を構成する各社が森林認証を取得しているため、認証材をすぐに別の認証材に代替するのは難しいと言われています。
また、EUがベラルーシからの木材輸入を制限したことなどによって、欧州で木材需給が逼迫する恐れが出てきました。
日本のロシア産製材の輸入量に占めるシェアは18%です。
ロシア材は節が小さくて加工性に優れていることや曲げに強いことから天井の下地材や合板の表裏面として重宝されていますが、天井の下地材でも毎月1万7000棟に影響が出ると言われています。
21年のウッドショック以来、輸入材の代替需要が増しているため、国産材はただでさえ取り合いの状況のなか、さらに争奪戦を激化させる一因になりかねないと言われています。
理由その② 木材だけではない、鋼材の価格が上昇(アイアンショック)!
鋼材価格はこの1年半で高騰していて、建設物価調査会によると、東京のH形鋼価格は21年に入ってほぼ毎月上昇。22年2月には47%高くなった。異形棒鋼も20年8月から22年2月にかけて50%値上がりした。ということです。
そのため調達のリードタイムが長引き、工場建設の見直しや公共施設の開業延期につながるなど建築プロジェクトにも影響が出始めてきています。
鉄鉱石と石炭の価格高騰や世界的な供給体制の見直しが需給バランスを崩し、価格の先行きが見通せなくなっているらしいです。
理由その③ 供給網による時差!
価格高騰は、供給網を下って川下へと流れるため、影響が出るのはむしろこれからです。
分業化が進んで供給網の中で一定の生産量と在庫量を確保できていたため、川上で起こった価格上昇を川下に転嫁するまでに時差が生まれました。
原材料の需給が逼迫しても全ての木材が一気に高騰しなかったというのは、供給網が複雑化して格高騰の一部を吸収したからでしょう。
例としては、大建工業は22年2月21日。合板やMDF(中密度繊維板)といった木質原料の高騰などを理由に建材の価格を引き上げると発表しました。
対象となるのは15品目で、22年4月21日出荷分から8~15%値上げするということです。
合板とは床の下地、床材、ドアや収納では芯材として大量に使用している材料です。
その他にもLIXIL(東京都江東区)は昨年12月に4月からの価格改定を発表しました。
主要商品では住宅用サッシが10~12%程度、エクステリア関連が10%程度、トイレが2~33%程度、ユニットバスルーム4~39%程度、キッチン2~11%程度などの値上がりとなっています。
その他価格改定を行う会社と内容は以下の表のとおりです。
木材に限らず、鋼材やコンクリート、建材・住宅設備などほぼ全ての建設資材価格が上昇してきています。
終わらないウッドショック!
せめて、ロシアの紛争が早く収束するのを祈るばかりです。